ガサガサガサ…
目の前に現れたのは大きく長い耳を持つウサギの魔物。
その尖った耳の先は固く、戦いの時には武器にもなるようです。
素早い動きで隙をうかがい、気を抜くとあっという間に体当たりの餌食に…
どうやって作ったのか色の薄れた赤い布を服のように身に着けていて、ちょっぴり頭もよさそう。
「アルミラージ?これは油断できない。」
猫はつぶやきどっしりと身構えると、いつでも動けるように目の前のウサギに集中します。
どうやらこの猫は旅に慣れていて、少し名の知れた魔法猫だったようです。
丈夫な革の鎧に美しい装飾の施された魔法使いの帽子。
大きな杖の先は二つに分かれ、その中心には魔法の力を高める鉱石がぷかぷかと浮かんでいます。
木の枝がザっと揺れたその瞬間、ウサギの魔物が円を描くように走り始めます。
猫の背後に移動したいのでしょう、素早い動きで魔法の狙いがつかないように、少しずつ近づいてきています。
「やっぱり賢い!」
猫は思わず叫びながらも注意深く呪文を唱え始めました。
杖の先を地面にそっとつけると、そこを中心に光の輪が広がり、強い風が猫の周りへと吹き抜けていきました。
「キュイ!」
風の魔法に驚いたウサギの魔物は2度左右に飛び跳ねると茂みの中へ消えていきました。
「ふう、これで逃げてくれてよかった。」
猫は戦いが好きではありませんでした。魔法を放った杖には可愛いリボンが付いていて、この杖を師匠から譲り受けた時に、優しいこの猫にはぴったりだと、その師匠が選んでくれたのだそうです。
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