パチッ…パチッ。
猫は拾い集めた薪を隙間ができるように組み、四苦八苦しながらもなんとか火を起こすことができたようです。
「火の魔法が使えればもっと楽なんだろうけど。」
この少し前のこと、旅の道中傾き始めた太陽を見て「そろそろ休める場所を見つけないと。」と座るのにちょうどよさそうな丸太を見つけ、そこで一晩野宿をすることに決めた猫。
火を起こす魔法は初歩の魔法として、魔法猫の学校では早めに習うようですが、この猫はどうにも火の魔法が苦手であまり練習もしていませんでした。
なので、このために持っていた火打石や乾燥させて細かくした葉っぱなど、道具を使ってなんとか火を起こしたのでした。
太い丸太にちょこんと座ると少しずつ大きくなる炎をじーっと見つめ、なにやら考え事をしているのでしょうか。
…グゥ。
おなかが小さく鳴りました。
「ああ、今は木の実のパンと干し肉がちょっとしかないんだった。早く街に着いて緋色鶏のスパイス焼きと四本角牛のステーキを食べたいなあ…。」
猫が今目指している街では貿易が盛んで、いろいろな地域から食材が集まってくるそうです。
飼うのが難しい緋色鶏や四本角牛の肉など、なかなか手に入らない食べ物も味わうことができ、この猫もそれを楽しみにしていました。
…緋色鶏は一回だけ食べたことあるけど、柔らかくて噛むと油がじゅわって出てきて、最高においしいんだよなあ。
そんなことを考えているとあたりはすっかり暗くなり、ふと空を見上げればたくさんの星々がきらきらと輝いています。
「モンスター除けの魔道具もあるし、この辺りはモンスターが少なくて安全だって聞いたけど、夜はやっぱり用心しないと。」
さっと吹き抜ける優しい風に乗って草木の青臭さが鼻をかすめました。
虫たちの鳴き声は賑やかなのに、その声を聴いていると自分が一人になってしまったように寂しさを感じさせます。
ゆらゆらと燃える焚火から離れるほど景色は黒くなっていき、遠くを見つめていると吸い込まれてしまいそう。
カラン…カラン。
猫はまるで自分の心を明るくするように、火に薪をくべるのでした。
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